プログラミング開始
前回はcBotを新規作成し、ログに出力させるプログラムをためしに動かしてみました。今回はこのcBotに実際の売買ロジックを組み込んでいきたいと思います。
売買ロジックを決める
プログラミングに入る前に、まずはどんなトレードするcBotを作るか決めておきましょう。王道のゴールデンクロスとデッドクロスで売り買いしましょうか。
短期移動平均線が長期移動平均線を上抜いたら次のローソク足の始まり値で買い、下抜いたら始まり値で売りとします。ストップロスとテイクプロフィットは固定値とします。
外部から設定すべきパラメータは下記5つにしておきます。
①短期移動平均線の期間
②長期移動平均線の期間
③エントリーボリューム(通貨量)
④ストップロスピップス
⑤テイクプロフィットピップス
テンプレートを見てみる
ストラテジーが決まったらさっそくプログラムに入ります。今回はまず最初に自動で作成されたコード全体を眺めてみましょう。
using System;
using System.Linq;
using cAlgo.API;
using cAlgo.API.Indicators;
using cAlgo.API.Internals;
using cAlgo.Indicators;
namespace cAlgo.Robots
{
[Robot(TimeZone = TimeZones.UTC, AccessRights = AccessRights.None)]
public class HellocBot : Robot
{
[Parameter(DefaultValue = 0.0)]
public double Parameter { get; set; }
protected override void OnStart()
{
// Put your initialization logic here
}
protected override void OnTick()
{
// Put your core logic here
}
protected override void OnStop()
{
// Put your deinitialization logic here
}
}
}
まず1~6行目までは使うパッケージを書いてあります。最初はいろんな機能使うためのおまじないだとでも思っといてください。
8行目のnamespaceはこの場所に名前を付けてるだけです。気にしなくて大丈夫。
重要なのは10行目から。10行目はHellocBotクラス(cBot本体となるクラス)にRobot属性を設定しています。今回はいじる必要ありません。
13,14行目はcBotの外部パラメータ部分。デフォルトで一つ意味のないパラメータが作られてますので、ここを上記5つのパラメータに変更します。
あとはメソッドOnStart()、OnTick()、OnStop()が自動で作られてます。コメントのとおり初期化時、Tick受信時、停止時に必要な処理があれば、ここに書き込むだけ。
なお、今回のロジックはTick受信時ではなくてローソク足更新時に動くため、先にOnTick()はOnBar()に書き換えておいてください。
protected override void OnBar()// ←もともとあったOnTickのTickを消してBarにした
パラメータを用意する
さっそくパラメータ部分をいじってみましょう。
[Parameter(DefaultValue = 0.0)]
public double Parameter { get; set; }
この部分ですね。Parameter属性を使用して外部パラメータとして設定しているのですが、今は深く考えなくてもいいです。
とりあえずコピペで増やして型と名前を変えてあげましょう。
// 短期移動平均線の期間
[Parameter(DefaultValue = 25)]
public int ShortPeriod { get; set; }
// 長期移動平均線の期間
[Parameter(DefaultValue = 75)]
public int LongPeriod { get; set; }
// エントリーボリューム
[Parameter(DefaultValue = 10000)]
public double Volume { get; set; }
// ストップロスピップス
[Parameter(DefaultValue = 10.0)]
public double StopLossPips { get; set; }
// テイクプロフィットピップス
[Parameter(DefaultValue = 30.0)]
public double TakeProfitPips { get; set; }
移動平均期間は整数なのでint。他は小数なのでdoubleです。DefaultValue = の部分にはパラメータのデフォルト値を設定します。適当で構いませんが、ここでは25、75、10000、10、30としました。
これでパラメータが用意できました。これを利用してプログラムを組んでいきます。
使うデータを準備する
まずは、使用する2本の移動平均線を持っておくための変数を用意します。
class ~{ }内でメソッドの宣言でもない場所に、変数の宣言をすると、それはそのクラスのメンバの変数となります。
先ほど作ったパラメータの行とOnStart()の間に2行書き加えてください。
//2本の移動平均線を持っておくためのメンバを用意
private SimpleMovingAverage _shortMa;
private SimpleMovingAverage _longMa;
Robotのメンバとなる変数を用意しました。なおC#ではクラスのメンバとなる変数のことをフィールドと呼びます。
privateな(クラス内からしかアクセスできない)、SimpleMovingAverage型の_shortMaという名前の変数を使う、と宣言してます。
SimpleMovingAverage型というのはcAlgoが最初から用意しといてくれてる単純移動平均線オブジェクトを扱うインターフェースです。
OnStart()内で変数の中身を用意(初期化)します。(前回のthis.Print("Hello World!");の行は消して構いません。)
_shortMa = Indicators.SimpleMovingAverage(Bars.ClosePrices, ShortPeriod);
_longMa = Indicators.SimpleMovingAverage(Bars.ClosePrices, LongPeriod);
Indicatorsというのは組み込みインジケータへアクセスするためのオブジェクトで、Robot(=自分自身)がもつプロパティの一つです。自分自身を表すthis.は省略してます。
ここでは終値基準で指定した期間の移動平均線オブジェクトを提供してくれる機能を呼び出した、と思ってください。ShortPeriodとLongPeriodは先ほど用意した外部パラメータです。
データの準備はこれで完了です。
売買ロジック部分を作る
肝となる売買ロジックを作ります。今回は「ローソク足更新時」のみ動作させるため、先ほど書き換えてもらったOnBar()内にコードを書きます。
移動平均線のクロスを判定するためのデータをまず用意しておきましょう。必要なのは直前と2つ前の各移動平均線の値です。
double lastShortMa = _shortMa.Result.Last(1);
double preShortMa = _shortMa.Result.Last(2);
double lastLongMa = _longMa.Result.Last(1);
double preLongMa = _longMa.Result.Last(2);
SimpleMovingAverage型のオブジェクトのそれぞれの値にアクセスするには.Resultプロパティを使います。Resultは移動平均線の数値が過去から現在へと並んだDataSeries型なので、そこからLastメソッドで最後から1つめと2つめを取り出してます。
if文でクロスの条件式を書いていきます。
if (preShortMa < preLongMa && lastShortMa >= lastLongMa) {
// ゴールデンクロス時の処理
} else if (preShortMa > preLongMa && lastShortMa <= lastLongMa) {
// デッドクロス時の処理
}
if文は()内の条件を満たしたらそのあとの{}内の処理をする、という命令です。最初の条件を満たさなかったら次のelse ifの条件判定に移ります。 &&は「かつ」という条件を表すときに使う演算子です。
一つ目の条件式を訳すなら「2つ前の短期MAの値が2つ前の長期MAの値より小さく『かつ』1つ前の短期MAの値が1つ前の長期MAより同じか大きい場合」=ゴールデンクロスした場合ということです。
後は発注処理書いたら出来上がりです。Robotの持つ発注メソッドExecuteMarketOrderを使います。this.は省略してます。
if (preShortMa < preLongMa && lastShortMa >= lastLongMa) {
// ゴールデンクロス時の処理→買い注文
ExecuteMarketOrder(TradeType.Buy, SymbolName, Volume, "Sample", StopLossPips, TakeProfitPips);
} else if (preShortMa > preLongMa && lastShortMa <= lastLongMa) {
// デッドクロス時の処理→売り注文
ExecuteMarketOrder(TradeType.Sell, SymbolName, Volume, "Sample", StopLossPips, TakeProfitPips);
}
完成です!Shift+Ctrl+Bを押してビルドしてください。(組み込み環境の場合はCtrl+B)。
もしエラーが出たらエラー一覧を見ながら直します。VSの場合は赤波線の場所がエラー部分ですので、タイプミスなどないか確認してみて下さい。
コード全体
using System;
using System.Linq;
using cAlgo.API;
using cAlgo.API.Indicators;
using cAlgo.API.Internals;
using cAlgo.Indicators;
namespace cAlgo.Robots
{
[Robot(TimeZone = TimeZones.UTC, AccessRights = AccessRights.None)]
public class HellocBot : Robot {
// 短期移動平均線の期間
[Parameter(DefaultValue = 25)]
public int ShortPeriod { get; set; }
// 長期移動平均線の期間
[Parameter(DefaultValue = 75)]
public int LongPeriod { get; set; }
// エントリーボリューム
[Parameter(DefaultValue = 10000)]
public double Volume { get; set; }
// ストップロスピップス
[Parameter(DefaultValue = 10.0)]
public double StopLossPips { get; set; }
// テイクプロフィットピップス
[Parameter(DefaultValue = 30.0)]
public double TakeProfitPips { get; set; }
//2本の移動平均線を持っておくためのメンバを用意
private SimpleMovingAverage _shortMa;
private SimpleMovingAverage _longMa;
protected override void OnStart() {
_shortMa = Indicators.SimpleMovingAverage(Bars.ClosePrices, ShortPeriod);
_longMa = Indicators.SimpleMovingAverage(Bars.ClosePrices, LongPeriod);
}
protected override void OnBar()// ←OnTickのTickを消してBarにした
{
double lastShortMa = _shortMa.Result.Last(1);
double preShortMa = _shortMa.Result.Last(2);
double lastLongMa = _longMa.Result.Last(1);
double preLongMa = _longMa.Result.Last(2);
if (preShortMa < preLongMa && lastShortMa >= lastLongMa) {
// ゴールデンクロス時の処理→買い注文
ExecuteMarketOrder(TradeType.Buy, SymbolName, Volume, "Sample", StopLossPips, TakeProfitPips);
} else if (preShortMa > preLongMa && lastShortMa <= lastLongMa) {
// デッドクロス時の処理→売り注文
ExecuteMarketOrder(TradeType.Sell, SymbolName, Volume, "Sample", StopLossPips, TakeProfitPips);
}
}
protected override void OnStop()
{
// Put your deinitialization logic here
}
}
}
次回はバックテストでちゃんと動くか確かめたいと思います。
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