スクリプトの動作確認をしたい
cTraderでもcBotのOnStartにだけ処理を書くことでスクリプトを作れるよ、という話をしました。
しかしこの作り方だと、バックテストのビジュアルモードで試してみることができません。実行と同時に一瞬で終わってしまいますから。
単純なスクリプトならデモ口座のリアルタイム環境でちょちょいとテストすればいいかもしれませんが、少し複雑なプログラムを作った場合はさまざまな相場で動作テストをするためにビジュアルモードを使いたいと思うのは自然でしょう。
今回はスクリプトをビジュアルモードで動かすための作り方を紹介したいと思います。
バックテスト時の動作だけ変える
やり方としてはバックテスト時の動作を、リアルタイム環境での動作とは別にプログラムすればいいのです。
IsBacktestingプロパティを利用して、バックテストのときだけは、起動後ボタンを押すたびにスクリプトの処理を走らせるように変更します。
(同じバックテストでもビジュアルモードのかそうじゃないかかでちゃんと振り分けたいという丁寧な方はIsBacktestingではなくてRunningModeプロパティを使ってもいいです。)
ボタンの使い方はわからない方もいるかもしれませんので、以前作ったAutoFibonacciを例に一つずつ説明します。
スクリプト本体を別メソッドにする
OnStart内に書いたスクリプト本体の処理を丸っと別メソッドに切り分けてください。名前は何でもいいですが、ScriptMain()とでもしておきましょうか。
最後にStop()を書いてる場合は、これだけは消してください。
//-----------------------------
// OnStartの中身を別メソッドに移す
private void ScriptMain(){
//内容省略(OnStartの内容をそのまま書く)
//Stop(); この行だけは消す。これが残ってるとボタン押した途端バックテストが止まってしまう。
}
OnStart()内ではScriptMain()を呼び出してからStop()を呼んであげれば、動作は今までと全く同じです。
バックテスト環境でだけ動きを変える
続いてOnStart()をバックテスト環境でだけ動作を変えるように変更します。リアルタイム環境では今まで通り、ScriptMain()を呼び出すだけですが、バックテスト環境ではScriptMainを実行するボタンを作って、チャート左下に設置してます。
//--------------------------------
// OnStart内でバックテスト時の処理振り分け
protected override void OnStart() {
if (IsBacktesting) {
// --- バックテスト環境のとき
var button = new Button { // ①ボタン作成
HorizontalAlignment = HorizontalAlignment.Left,
VerticalAlignment = VerticalAlignment.Bottom,
Margin = 20,
Text = ToString(),
};
button.Click += (_=>ScriptMain()); // ②動作登録
Chart.AddControl(button); // ③チャートに設置
} else {
// --- リアルタイム環境のとき
ScriptMain();
Stop();
}
}
ボタンをを作る処理は、①ボタン作成と同時にプロパティ設定、②ボタンの動作登録、③ボタンをチャートに設置、というだけです。ボタンの場所や色変えたければnew Button{}内をいじってください。(参考:Button)
完成
これで完成。コード全体載せておきます。このままコピペしてビルドすれば動きます。バックテスト(ビジュアルモード)では左下に"AutoFibonacci"というボタンが表示されるのがわかると思います。
using System;
using System.Linq;
using cAlgo.API;
using cAlgo.API.Indicators;
using cAlgo.API.Internals;
using cAlgo.Indicators;
namespace cAlgo.Robots {
[Robot(TimeZone = TimeZones.UTC, AccessRights = AccessRights.None)]
public class AutoFibonacci : Robot {
[Parameter(DefaultValue = 25)]
public int Period { get; set; }
//--------------------------------
// OnStart内でバックテスト時の処理振り分け
protected override void OnStart() {
if (IsBacktesting) {
var button = new Button {
HorizontalAlignment = HorizontalAlignment.Left,
VerticalAlignment = VerticalAlignment.Bottom,
Margin = 20,
Text = ToString(),
};
button.Click += (_ => ScriptMain());
Chart.AddControl(button);
} else {
ScriptMain();
Stop();
}
}
//-----------------------------
// OnStartの中身を別メソッドに移す
private void ScriptMain() {
// --- 対象期間のbarsを抽出して最高値、最安値のインデックスを求める
var bars = Bars.Skip(Bars.Count - Period).ToArray();
var highestIndex = bars.Select((bar, index) => Tuple.Create(index, bar.High)).OrderByDescending(t => t.Item2).First().Item1;
var lowestIndex = bars.Select((bar, index) => Tuple.Create(index, bar.Low)).OrderBy(t => t.Item2).First().Item1;
// --- フィボナッチリトレースメントの始点と終点を決める
double y1, y2;
DateTime t1, t2;
if (highestIndex < lowestIndex) {
y1 = bars[highestIndex].High;
t1 = bars[highestIndex].OpenTime;
y2 = bars[lowestIndex].Low;
t2 = bars[lowestIndex].OpenTime;
} else {
y1 = bars[lowestIndex].Low;
t1 = bars[lowestIndex].OpenTime;
y2 = bars[highestIndex].High;
t2 = bars[highestIndex].OpenTime;
}
// --- フィボナッチリトレースメント描いて、表示レベルを調整し、編集可能にして終了
var ff = Chart.DrawFibonacciRetracement(Guid.NewGuid().ToString(), t1, y1, t2, y2, Color.Yellow);
var visibleLevels = new double[] { 0, 38.2, 50.0, 61.8, 100 };
foreach (var level in ff.FibonacciLevels) level.IsVisible = visibleLevels.Contains(level.PercentLevel);
ff.IsInteractive = true;
//Stop(); ここが残ってるとボタン押した途端止まってしまう。
}
protected override void OnTick() {
// Put your core logic here
}
protected override void OnStop() {
// Put your deinitialization logic here
}
}
}
動作確認だけでなくトレード練習にも
ボタンはいくつでも設置できますので、このボタンでスクリプト(なんらかの処理)を呼び出すという処理は地味に便利です。
例えば発注スクリプトや決済スクリプトを自作して、スクリプトだけでトレードが完結できるようにしておけば、簡単にバックテスト環境で売買練習ができるcBotが作れます。
参考までにボタンを複数設置するときのサンプルコードを載せておきます。ポイントはボタンを設置するためのパネルを作ってボタンをのっけてからそのパネルをチャートに設置するというところです。
(直接ボタンをチャートに複数置くこともできますが、パネルに置いておいた方が後々なにかと便利です。)
ちなみに、下記コード内のOrderMethodとExitMethodに自作の発注スクリプトと決済スクリプトの中身を移すだけで、自分専用トレード練習Botが完成します。(このコードだとリアルタイム環境では動きません)
protected override void OnStart() {
if (IsBacktesting) {
var panel = new StackPanel {
HorizontalAlignment = HorizontalAlignment.Left,
VerticalAlignment = VerticalAlignment.Bottom
};
var button1 = new Button {
Margin = 5,
Text = "Order",
};
button1.Click += (_ => OrderMethod());
var button2 = new Button {
Margin = 5,
Text = "Exit"
};
button2.Click += (_ => ExitMethod());
panel.AddChild(button1);
panel.AddChild(button2);
Chart.AddControl(panel);
}
}
private void OrderMethod() {
//発注処理 例:この通貨ペア1000通貨の買い注文
ExecuteMarketOrder(TradeType.Buy, SymbolName, 1000);
}
private void ExitMethod() {
//決済処理 例:全ポジション(全通貨ペア)決済
foreach (var pos in Positions) pos.Close();
}
ちょっと前にcTranerというトレード練習ツールを公開しておいてなんですが、自分でスクリプト作る人ならトレード練習はもうこれだけで十分な気もしてきました。
あ、自分でスクリプトは作らないけどバックテスト環境でトレード練習したいという方は、ぜひcTranerをご利用ください。